箱 (40)

箱 (40)

物心ついた頃には、家の中に幾つかの標本箱があった。父と兄の採集行に、いつも泣きながらついて行ったそうであるが、あまり覚えていない。父は亡くなり、兄はもはや採集を行ってはいないが、標本箱は残っている。 標本箱の中で、印象に残っているのは、イラガイツツバセイボウ(Chrysis shanghaiensis)である。この青緑のメタリックな外装をした美しいハチは、文字通り、イラガ(刺蛾 Monema flavescens)の蛹に卵を産み付ける、寄生バチである。個人的には、セイボウ(青蜂)の仲間は、ハチ目(Hymenoptera)の中で、最も美しいグループであると思っている。美しさという点で、鱗翅目にお…